技術講習会は、どんなお話をしているのか、一部を抜粋にてご紹介いたします。
2018年度 第2回 技術講習会 2018年12月8日
2018年度 第1回 技術講習会 2018年5月19日
「注目の機材:ニコンD850と最新注目レンズ&高倍率な撮影レンズLAOWA」
2018年5月19日 会場:アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)
2018年度のSSP定期総会に併せて、約60名強の参加者で技術講習会は開催されました。今回は、発売以来品薄状態が続く人気機材ニコンD850と超小型化されたニッコール300㎜F4と魚眼ズームレンズに超接写撮影にもこだわり開発されたLAOWAのレンズにスポットを当てての講習会となりました。この度の技術講習会にご協力いただきました協賛会社の㈱ニコンイメージングジャパン河村様には、この場を借りて暑く御礼申し上げます。
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<テーマ①:ニコンED850と注目レンズ>
【ニコンD850は何が凄いのか。表現領域を広げるD850に迫る。】
㈱ニコンイメージングジャパン河村信太郎氏の機材紹介より
開発コンセプトは、ニコンでは高画像モデルと高速・高感度モデルの2つの製品軸がありますが、それを融合させ高画素でありながら高速撮影ができるのがD850の大きな特徴と思っています。前機種のD810も評価が高かったのですが、D810でやや評価の低かった点を改善し、特に暗所での撮影と連写速度、高画素ということも改善して製品化をしていきました。D850は、あらゆるジャンル、全ての方に満足をしていただけるよう目指しているモデルで、風景・動体・人物・動画と様々な撮影領域の方々に楽しんでいただけることを目指しているカメラで、プロ・アマチュアそれぞれにお使いいただけるよう価格面も含めて頑張ったカメラです。
D850の性能を発揮するには、ニッコールレンズの性能とあいまって、より高画質な画像が得られます。風景撮影、野鳥撮影でもニッコールレンズは超望遠から短焦点までたくさんありますのでD850の良さを十分に体感していただけると思っております。
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<テーマ①:ニコンED850と注目レンズ>
【D850による映像表現の可能性に、作例と機能紹介で迫る】
海野和男氏
D850を去年の12月と今年の4月に借りてマレーシアで撮影しました。4月は桜がまだ咲いていたので、出発前のテスト撮影もしてみました。今回、カメラはニコンD850(以下、D850)だけではなくパナソニックLUMIX G9(以下、G9)も借り、オリンパスEM1mkⅡと3台を持って行きました。撮影枚数で見るとオリンパスとルミックスが1万カット位、ニコンが6000カット位撮ってましたが(RAWを除くとさらに少なかった)、3機種の使っている時間では、一番長い時間使っているのがニコンでしたが、撮ったカット数では少ないのです。LUMIXなどですと秒30コマで撮ったりするのであっというまに撮影枚数が増
えますが、D850は秒7コマですから。この辺にカット数の違いが出たようですがD850は凄く良いカメラです。まず、D850の最大の特徴は、高
画質高画素で桜の花の部分を拡大をしても雄蕊が良くわかるのは4575万画素の威力かなと思います。北の丸公園で撮ったハナニラですが、画面1/4位を切り取っても1000万画素ありますので十分に使えます。仕事で使うとなると、トンボの図鑑写真と図鑑写真でない写真を同時に取ろうと思えばトリミング考慮をすれば同時に撮れます。鳥も良く写ります。僕はあまりレンズをたくさん持って行かないのでAF-S NIKKOR 300㎜F4PF ED VR (以下PF300㎜ ※1)、これ良いレンズで、オリンパスEM 1用の300㎜F4より軽いのです。これに1.4xテレコンバータを付けて420㎜相当ですが、拡大して見ると毛並みもシャープです。
あと、D850をスライドディプリケータ―として使うというのがあり、これは最高に良いです。家庭用スキャナーで撮ると画素数だけ大きくてガチガチなデータとなりダメですが、僕は随分昔からポジを入稿するときは、ポジをデジタル一眼レフで撮り入稿しています。古い写真ですが写真の雰囲気が出るのです。今年の夏、小諸でいつもの写真展をファーブル昆虫記と心の虫たちというテーマで行いますが、その画像づくりにポジをデジタル化するのに良いと思っています。なお、35㎜でなくてブローニをデュープするととても奇麗に行きます。サカダチコノハナンフシのギナンドロボルブ・雄・雌は、めったにいませんから30年前に撮ったのを デュープしてみました。子供を守るハバチがブラジルにいますが、こういう希少な写真をデ
ジタル化するのに一番いいです。ニコンでは、35㎜フィルム版用のフィルムデジタイズアダプターES-2が新発売になり、手軽にJPEG画像として保存することができます。
最後に、僕のD850の総合的評価は、とても良いカメラで、今までのニコン史上では一番画質の良いカメラだと思います。高感度は思ったより弱かったですが4575万画素の解像度は非常に良いです。レンズが重かったら短いレンズでトリミングをすれば良いという使い方もできるし、
僕も本格的に少し使ってみようかと思いました。ただフォーカスシフト撮影は今後ブラシアップをしないと、標本や小物を高画質で大きなプリントを作りたい目的で撮るときは最適ですが、外で動きのある風景とか昆虫には結構厳しいです。建造物や仏像などを深度合成で撮るには良いです。撮影時に深度合成がちゃんと出来ているかどうかは、カメラ内で合成ができないので、撮った後でPC上で合成してみてガッカリだったということがあるので、カメラ内合成ソフトが入っていてその場で簡易的にサムネールでも良いから合成結果が確認できて失敗しているかどうか分かると良いですね。
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<テーマ②:LAOWAレンズ>
【高倍率単レンズ(LAOWA)によるマクロ撮影の可能性】
黒柳昌樹氏
今回紹介するLAOWAは、協賛会社のケンコートキナーさんの子会社が扱う中国製輸入レンズです。まだ知名度があまり無いですが、ニッチなレンズを作っている面白いメーカーです。今回、7.5㎜F2、15mmF4、60㎜F2.8マクロの3本を紹介しますが、3本とも接写能力に大変優れたレンズです。
最初に焦点距離が短い7.5㎜のF2です。ギフチョウが真上に飛ぶ瞬間をオリンパスOM-D E-M10mkⅡ・プロキャプチャーモードで撮影です。全てにピントが合い、魚眼と違い樹木が不自然に歪まないのも良いです。木々の間にカメラを突っ込みツマキチョウを撮った写真でも、大きなカメラだと葉などにカメラが当たり蝶が逃げてしまいますが、このカメラセットだと飛ぶ直前まで寄ることに成功しましました。
蝶が飛び回る写真もカメラセットが軽いからできる芸当です。複数のアゲハを同じ画面に入れるのは難しいのですが、被写界深度が深い特性を活かし3頭を同時に画面に入れることができました。このレンズは最短撮影距離が12㎝と寄れるレンズなので、あまり大きくないハナナガツチバチの仲間なども主役として十分な大きさに写すことが出来ます。AF機構を持ってないので小さいというのもありますが、F2という明るさを利用し開放で撮ると、良い感じに背景がトロ~ンとしたボケ味を出してくれます。花弁が舞うソメイヨシノも最短撮影距離・プロキャプチャーモードで追いかけながら撮ると、レンズ先端あたりに舞う花弁が横切った瞬間に撮るなどなどの芸当もでき、今までに撮ろうと思っても撮れなかった様々なシーンを撮ることが出来ます。
15㎜F4ワイドマクロは、何と等倍まで寄れシフトの機能まで付いています。普通シフトレンズは、パースがついて上窄まりのビルを真直ぐに撮るなどの活用例がありますが、これが接写時に役に立つのです。近接で画角が広いために自分の影は入ってしまいがちなときに、シフトで光軸を変えると自分の位置を下げ自分の影を画面から消すことが出来ます。これを応用することで、自分の影がついてしまい寄れないシーンでも、自分の影を消すことで等倍まで寄るという撮影が出来ます。
60㎜マクロは、レンズ単体で無限遠から2倍まで撮影が可能です。フルサイズで2倍ですので、APS-Cで約3倍、m4/3で約無限遠から4倍まで撮れるというスペックのレンズです(m4/3は、マウントアダプター使用による撮影)。普通のマクロレンズ同様の美しい描写でボケも素直で奇麗です。オリンパスE-M1mkⅡの新しいファームウェアで、従来は純正レンズでのみ可能なプロキャプチャーモードが、電子接点のないLAOWAなどのレンズでも使えるようになったので、早速その機能を使ってツマグロヒョウモンが飛び上がるところを写しました。小さい昆虫にどこまで寄れるかと寄ってみると、複眼の上に乗っている花粉までが見えてくる感じになります。感度を上げ手振れ補正も付いているので手持ちで超接写ができますので、かなり用途が増えてくると思います。昆虫を超接写で等倍・2倍・3倍・4倍と連続拡大して手持撮影することも出来、突然目前に来た時も好きな大きさで撮ることが出来ます。
このレンズは、全てマニュアルフォーカス(MF)のレンズですので、MFで使うことに抵抗の無い方であれば、いろいろ楽しめるのではと思います。マウントは、7.5㎜はm4/3専用のマウントですが、15㎜と60㎜はフルサイズに対応しています(ニコンF、キヤノンEF、ソニーA&FE、ペンタックスKマウントあり)。価格帯は、だいたい6~8万円程度に収まっています。
SSP特別セミナー 2018年4月29日
2018年4月29日(日/祝日) 午後3時開演~午後5時
会場:ケンコー・トキナー・セミナールーム
(中野駅より徒歩7分)
講演
里川正広「瞬間撮影のテクニック(野鳥ほか)」(60分)
新井文彦「広角で撮るきのこ・粘菌の生態」 (60分)
日本自然科学写真協会有志による自然科学写真撮影技術読本『生き物の決定的瞬間を撮影する』の刊行に伴い、特別セミナーを開催いたしました。会場は満席(募集は50人)、熱気あふれるセミナーとなりました。
三脚を据えてデモンストレーション